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コラム

事業経営に於ける危機管理について その1

平成18年2月

 事業を経営されておられる皆様方をとりまく環境は、事業の内容・規模によって多少の違いはあっても、決して安寧なものではありません。
 経営者ご自身の心身のみに限定して捉えてみても、あらゆる病や怪我、或いは事故などなど、一身を取り巻く環境は常に危険と隣り合わせに身を置いているわけです。
 ことが、事業経営に関する事となりますと、経営者(事業者)として日頃から、事業経営を円滑に遂行するため、事業を取り巻くあらゆる危機・危険に対する備えが必要である事については皆様も異論のないところかと思います。

 このことに関しては、想定される事案の全てについて相当広い範囲に及び考え対応していく必要があるかと考えます。
 しかしながら、すべからく対応管理することは事業規模にもよりますが、不可能なことかも知れません。
 従いまして、皆様の事業経営上の危機回避に於いて、簡単なことと思われながら実際面で疎かにされがちな事項を取り上げ、先々の紛争解決にあたって最低限これだけは実行維持して頂きたいことを取り上げる事に致します。
 尚、皆様が経験された悔しい思いをなされた事例などが御座いましたら、是非、事件の概要などご提供下されば幸甚です。

対処すべき事項

 それでは、まず最初に経営上の危機管理(危機を回避するための施策)をするために対処すべき事項について考えてみましょう。

  • 債権の管理
  • 債務の管理
  • 労務の管理
  • 情報の管理
  • 災害対応の管理

  今回は債権の管理について、具体的な危機管理への配慮を考えて行きます。

1.債権の管理

☆ 現在の債権額の存在を立証出来ますか?!

(1)受領書等の収受と確実な保存管理

 一般的な事例で言えば、売上(商品・製品等や提供した役務など、以下「商品等」と言います)の相手先(売り先又は売り先となる者から指示された納入先)に商品等を引き渡す際には、その商品等と引き換えに必ず受領書(引き渡した商品等の内容が明記されているものであること)を収受して確実に保存管理をしておく必要があります。
 運輸会社と運送に関する基本契約を結ぶ際にも、運送会社用の受領書とは別に事業者が発行する受領書も商品等に添付し、これと引き換えに収受しておくことが賢明かと思われます。(日本通運に確認したところ運送契約分の運送については事業者発行の受領書収受も行ってくれるようです。ただし、契約に「特約事項」として盛り込む必要があるかも知れません。尚、宅配便についても確認の必要があるかと思います)

※コメント※
受領書は、債権管理だけでなく、仕入れた物を返品した場合など売上以外に関しても、幅広く考えて頂く必要があるかと思います。
物(役務を含む)の引渡 ⇔ 相手方の受領確認書

(2)債権の消滅時効に注意

 商事債権の消滅時効は5年とされていますが、民法では、短期債権については債権の性格を考慮しての債権の種類毎に消滅時効の取り決めがありますから、皆様の事業の内容とその事業に係る債権の種類ごとに、予め確認しておくことが先ず必要です。

※コメント※
 相手方と予め取り決めてある支払い約定日を過ぎても支払いがない場合、単に毎月請求書を送っているだけでは、消滅時効を中断することにはなりません。
 支払い遅延が発生したら早々に相手方に出向き、相手側の債務認識を証する確認書を作成して、これに債務者の署名押印を取っておきましょう。
 ただし、一度きりではだめで、特に短期債権については支払いがあるまでは何度でも確認書を取る必要があります。 もっとも、このような手段を講じても支払いをしないような相手には、時期を逸しないように簡易裁判所に出向き、自ら支払督促の法的手続きを取るのが最も賢明かと思います。
回収遅延債権は放置しない!

※支払い督促の手数料
手数料は、切手代¥1,050-、ハガキ2枚、それと債権額に応じ印紙が必要です。ちなみに印紙は債権額に応じて次の通り定められています。
10万円以下 ¥500- 以後90万円以下まで10万円刻みで¥500- 増加
100万円以下 ¥5,000- 以後480万円まで20万円刻みで¥500- 増加
500万円以下 ¥15,000- 以後50万円刻みで¥500- 増加・(後不詳)


(3)与信管理

 取引を開始する際はもとより、取引開始以後も一定期間(出来る限り短期間がベターです)ごとに繰り返し、売上の相手先の財務状況を調査し(金融機関やリサーチの専門会社・機関を利用)、取引額の上限(債権総額限度)を取り決めてから取引を開始しましょう。

※コメント※
 債権が回収できなくなると言うことは、こちらが費やしたコストの全額を無償で贈与することと同じ事なのですから、与信管理には、相応の費用を惜しまないことも必要ではないかと思います。
 こちらが資金的に窮している時期に、降って湧いたような注文には呉々も気をつけて下さい。陥穽(落とし穴)が口を開けて待っているケースが多分に見受けられます。
 与信管理は、取引担当者の注意力に拠ってもかなり推し量ることが出来ます。日頃から担当者へ注意を促しておきましょう。


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